「食事制限」「運動」に次ぐ第3のダイエット方法

「食べ過ぎ、特に炭水化物と脂肪の過剰摂取は太る原因である」というのは肥満を説明する上で最も分かりやすい理由であり、誰もが理解できる説明だと思います。

同様に「運動不足は肥満につながる」という事にも異論はないでしょう。

摂取カロリーよりも消費カロリーが少なければ、余ったカロリーは生理的機能として体内に脂肪として蓄えられていくわけです。

ですから本気でダイエットに取り組む多くの人は、できるだけ低カロリーの食事を摂り、毎日運動する事で消費カロリーを増やし、貯まった脂肪を燃焼するという行動にでます。

しかし、人間の身体がそう単純でないことも、何となくですが思い当たる経験があるかと思います。そして、いくら運動しても痩せないという苦い経験から、その原因は「遺伝」であったり「体質」であると結論づけて諦めているのではないでしょうか。

一方では、同じ量を食べてもほとんど太らない人もいます。その理由としてよく聞くのは、「腸の吸収率が違う」とか、「基礎代謝が違う」とか、「太らない体質」という話になります。

ところが、2013年9月、ワシントン大学のジェフリー・ゴードン教授が世界的な科学雑誌「サイエンス」に「腸内フローラの乱れが肥満体質の原因になる」という研究を発表し、腸内に「やせる菌」を増やすという第3のダイエット方法が注目され出しました。

ヤセ菌の「バクテロイデス」、デブ菌の「ファーミキューテス」

ゴードン教授らの研究では、無菌マウスに「太っている人」と「痩せている人」の腸内フローラを移植し、1ヶ月間、同じエサの量と運動量で育てました。

その結果、「太っている人」の菌を移植されたマウスは、脂肪がどんどん増え、太ってしまい、「痩せている人」の腸内フローラを移植したマウスはほとんど脂肪量が変わらなかったということです。

便を移植する人を変えても結果は同じでした。この研究により、食事、運動量が同じでも持っている腸内フローラによって「太りやすい人」と「痩せやすい人」の体質が決まるという事です。

そして、パイロシーケンス法という遺伝子解析により、肥満マウスにはファーミキューテス類が多く、バクテロイデス類が少ない傾向があることが分かりました。

そこでゴードン教授らはファーミキューテス類を「デブ菌」、バクテロイデス類を「ヤセ菌」と名付けました。

ただ、この研究チームの分析で分かった事は太る人には「肥満させる細菌がいるわけでなく、肥満を防ぐ細菌がいない」という事です。

脂肪の蓄積を抑える「短鎖脂肪酸」を生成する「バクテロイデス」

腸内フローラはこのブログでも何度もご説明しているとおり、腸内細菌同士のバランスが重要です。実際にそれぞれの菌の働きを考えると理解しやすいでしょう。

日和見菌の属するファーミキューテスは主に消化された食物を様々な栄養素として体内に吸収する働きをする腸内細菌です。

一方で同じ日和見菌に属するバクテロイデスは脂肪の吸収を抑えたり、燃焼する「短鎖脂肪酸」を生成する腸内細菌で、双方全く違う働きをしています。

ですから、ファーミキューテスが多いと栄養素がどんどん体内に吸収され、摂り過ぎた栄養素は脂肪として脂肪細胞に蓄えられていきます。

放っておくと、どんどん肥大化していきますので、この暴走を止めるのが「短鎖脂肪酸」なのです。
(参照:『ダイエット効果が期待される腸内フローラ代謝産物「短鎖脂肪酸」』)

バクテオイデスなどの腸内細菌が食べ物を分解して「短鎖脂肪酸」をつくり、これが体内に吸収され、やがて脂肪細胞にたどり着きます。

脂肪細胞にある短鎖脂肪酸を感知する受容体が働き、これにより脂肪細胞は栄養分の取り込みを止めて暴走を防ぐわけです。

また、短鎖脂肪酸は全身の代謝を活発化させる働きもしますので、とりすぎた栄養素がどんどん燃焼されていくというイメージです。

デブ菌「ファーミキューテス菌」が増えてしまう食生活

太りやすい体質の人はデブ菌であるファーミキューテス菌が多いわけですが、その原因はやはり食生活にあるようです。

ファーミキューテス菌は、”脂質・糖質”の摂りすぎにより、さらに働きが活発になってどんどんエネルギーを体内に吸収していきます。

特に飽和脂肪酸(ラードやバター・肉類の脂肪・乳製品の脂肪)という脂質や糖質系は多くの胆汁が排出されることになり、結果として痩せ菌であるバクテロイセスが殺菌されてしまい、益々ファーミキューテス菌が優位になります。

ちなみにファーミキューテス菌は酸にとても強い菌で胆汁にも殺されません。肥満な方は一般的に胆汁の量が多いといわれています。

ただ、栄養素の吸収も大切な要素ですので、ファーミキューテス菌の働きも必要です。大切なのはやはり両菌の「バランス」です。

逆にいくら食べても太らない、痩せすぎの人はファーミキューテス菌が少ないことが考えられ、栄養の吸収が不足していることが懸念されます。

理想のバランスは、ファーミキューテス菌:バクテロイデス菌=4:6と言われています。

 痩せ菌「バクテロイデス菌」を増やす方法

このブログでもご紹介していますが、善玉菌が喜ぶ食品として、食物繊維、発酵食品、乳酸菌等を上げさせていただいてますが、バクテロイデスなどの短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌は「水溶性食物繊維」を主なエサとして生きています。

具体的には、ひじきやりんご、わかめなどの海草やキウイフルーツなど「水溶性食物繊維」を多く含む食品です。

また、カメ壷で穀物を発酵させてできた黒酢には、酢酸菌が分解・生成した多くの有機酸(酢酸、酪酸、乳酸やコハク酸など)が既に含まれており、その中に短鎖脂肪酸が含まれています。

人は食物繊維のほとんどは消化できませんが、短鎖脂肪酸を作る腸内細菌はこれを食べています。一方、野菜不足の食生活はそれをエサにしている腸内細菌が減っていきますので、結果的にデブ菌が増えることになります。

ダイエットといえば野菜や食物繊維を多く食べて便通を良くするイメージですが、それとあわせて、実は腸内フローラにも影響を与えているのですね。

是非、水溶性食物繊維をはじめとする海草や野菜を多くとって、やせ菌を増やす「太りにくい体質」作りに励んでみてはいかがでしょうか。